椅子は楽器の練習にとても大事!!選択を誤り、それに気がつかないと上達に遠回りしますよ、というお話です。
弦譜堂の代表・松本祐一(@YuichiMatsumoto)です。
あなたは普段、どんな椅子に座って楽器を弾いていますか?
やけに力んでしまうとか、姿勢を取り続けるのがつらいといった悩みはありませんか?
今日は楽器を弾く時に座る椅子がどれほど重要かというお話です。
近年特に需要が高まるリモートワーク用としても参考になりましたら幸いです。
※追記 2021.3.13
Steve Vaiが使っている椅子「Sonus Guitar Chair」を追記しました。
※追記 2019.8.23
私が使っている椅子。
現在、私が仕事場で使っているのはErgohuman Proという椅子です。オフィスチェアーの最高峰のひとつで、2017年に導入しました。
(写真ではオットマンを途中まで出している状態です。)
座り心地は最高な椅子。
一言で申し上げてこれは最高です。
長時間机に向かう作業でも体に馴染んで疲れません。
こういうシルエットの椅子をギタリスト・ベーシストは敬遠しがちなのですが、それには肘掛けが楽器に当たってしまうという理由があります。
しかしErgohumanは座面を前に出して肘掛けを後ろにスライドさせればギターを弾くのにも邪魔になりません。最終的に購入の決め手になったのはこの点でした。
私は採譜やアレンジの作業中は8割くらい楽器を持って行いますので、楽器を持ってもどこにもぶつかったりしないというのは譲れないポイントでもありました。
ビジネスチェアーの意外な落とし穴。
しかし・・・これ、楽器の演奏や練習には避けた方がいいかもしれません。
座っている人を疲れさせない仕組み、この仕組みが演奏に対してはマイナスに作用してしまうのです。
机でPCに向かう作業の相棒としては最高なんですが、楽器を弾く時はこの椅子は使っていません。
それはなぜなのか?
詳しくお話しする前に、私の椅子遍歴を聞いてください。
私の椅子遍歴。
私がこの25年間ほど、自宅で楽器の練習用に使ってきた椅子は以下の通りです。
- パイプ椅子
- ドラムスローン
- オフィスチェアー
- ビジネスチェアー(前述のErgoHuman Pro)
- 箱
- その他
ひとつずつ使っていた感想とともにご紹介します。
パイプ椅子
どこにでもある一般的なパイプ椅子です。
20代半ばを過ぎる頃までは自宅でもこれでした。
当時の私はソロギターに夢中で、月1~2ペースのライブのために我ながらよく練習していました。
しかし慢性的な運動不足に加えて根を詰めすぎる性格もたたってか、決して体は楽ではありませんでしたね。
この「座っていて楽ではない」ところが重要だったんですが、当時はそれが分かりませんでした。
立ったり座ったりするたびに床を引きずってしまうのも気になり、違うイスを探し始めるのですが、新しい椅子に替えるほどに練習が捗らなくなっていきます。
パイプ椅子の次に選んだのはこちらでした。
ドラムスローン
いわゆるドラム椅子ですね。
楽器用の椅子だし、座面はクッションになっているので多少は楽かな?と思いながら選んでみました。
背もたれがないのが不便でしたね。
そして体のつらさは別に改善していないような感が否めませんでした。
気がつくと歯を食いしばり、肩をすくめるような姿勢になっています。
前よりも疲労感が増していることに気づいてはいたものの、パイプ椅子に戻す気持ちにはなれなかったのはどうしてでしょうと今になって思います。。。
安価なものを選んでしまったのでネジを締めてもぐらつきが残ったことも良くなかったのです。
当時は椅子に対して意識したことと言えば座面の高さや面積、クッションの厚みくらいでした。
体の使い方のためにもっと重要なことがあることに、まだ気がついていません。
何がいけなかったのかはこの後のセクションでご説明します。
オフィスチェア
次に選んだのがオフィスチェアー(普通の事務椅子)です。
しかし違和感はますます募ります。
とにかく楽器が弾きにくくて仕方ありません。
不自然な疲れと集中できなさに苛立ち、焦りました。
当時は椅子の高さが合っていないことが原因と考え、しょっちゅう調整していたのですが納得できることはついにありませんでした。
別のタイプの事務椅子に変えたりしても、その時は少し改善されたように思うのですが根本的な部分で練習に不向きなので当然解決しません。
立って弾いた方が楽に感じる。
もうこの頃は「座って弾くより立った方が楽」であると本気で思っていて、立って練習するようになっていました。
ある意味当然です。
しかしまだ筋トレを始める前の一番体力がない時期(30代前半)でしたのであまり長く弾き続けることもできませんでした。
それにエレキやベースはともかく、クラシックギターを立って弾くわけにもいかず。
立てば弾けるのに座るとなぜ弾けないのか。気がつくまでまだ何年かかかります(遅い・・・)。
何がいけなかったのか?「力を吸収する仕組み」だった。
疲れる理由は主に2つ。「座面の回転」と「キャスターの存在」にありました。
座ったり立ったりを楽にする仕組みであるこれらが、いざ椅子の上で楽器を弾こうとする時にとことんマイナスに作用してくるのです。
楽器を弾く姿勢を取る時には「椅子がキャスターで転がって動かないように、座面が回転しないように」と常に体のあらゆる筋肉を使ってバランスを取り続けることになります。そうならざるを得ないのです。
ドラム椅子には回転の機能が、オフィスチェアーには回転とキャスターの両方の機能がありました。
脱力以前に全身の緊張でやっとバランスを取ろうとしているような状態、これでは力を抜いた演奏などできるわけがありません。
重力に対する反発を利用するテクニックが封じられ、押さえこむような力で音を出すことになります。当然楽器の鳴りも抑え込まれますが、自分に鳴らす力が足りないのだとますます力むようになりました。
上記の椅子遍歴の中でなら、楽器の演奏のためにと考えれば最初のパイプ椅子がベストでした。回転したりする機構がなく、姿勢の制御に意識とエネルギーを持って行かれずに重力の反発を活かすことに集中できるからです。
気がつくまで何年かかったでしょうか。
思えば上達のスピードも、パイプ椅子以降は落ちていったと認めざるを得ません。
現状の最適解、「箱」。ただし自宅限定。
今、私が自宅で楽器を弾く時に座っているのは椅子ではありません。
なら床に座ってるの?
いいえ、「箱」に座っています。
椅子も楽器の一部なのだと実感・・・。
— 松本 祐一 (@YuichiMatsumoto) March 5, 2019
これは椅子ではなく箱ですが、身体から床まで振動を伝えてくれるのがよくわかります。そしてヴィオラ・ダ・ガンバを弾くのにちょうどいい高さ。
元々ガンバには低めの椅子の方が良いとされているみたいです。 pic.twitter.com/HxNjALx09c
収納用の箱とオットマン(足置き)が合体した製品で、Amazonで買えます。
ギターでも、ヴィオラ・ダ・ガンバでもこれに座っています。
身体を通じた楽器の振動を床まで伝達してくれて、なおかつ重力と反発力を散らしてしまうことなくしっかりと受け止めてくれます。
オットマンとしてのクッションも程よいものです。
高さは41cmくらいで、私の体格と不思議なほど馴染んでくれます。
演奏とPC作業で椅子を使い分ける。
楽器は箱に座って弾いて、リラックスしたくなったら楽器はスタンドに置いてErgohumanに移動すると。
今のところこれが最適解かなと感じています。
PCに向かう作業(採譜も含め)と楽器の演奏を同じ椅子で済ませることは厳しい、というのが現在の私の見解です。
続報:いい椅子見つけました。(2019.8.23.追記)
良い椅子を見つけましたので追記します。
ニトリの「木製スツール」です。お値段2,700円くらいでしたでしょうか。
キャスターや高さの調整などの機構が一切ない、シンプルな木製のスツールです。
これが前述の箱以上に楽器演奏向きかもしれません。
元々フローリングの床で滑りやすいように足の底にフェルトが貼られていますが、 楽器演奏には滑ると困ります。
かと言ってフェルトをはがすと床に傷をつける恐れが出てきます。
そこで使うのが別売りの滑り止め付きソックス。 脚に履かせることで滑りを防いでくれます。
色々な種類がありますが、今回私が選んだのはこの猫足タイプです。
滑り止めが肉球デザインになっているところが気に入りました。
最近はこういう遊び心が大事だなとつくづく感じるんですよね。
愛着が出てきて扱いが丁寧になる効果もあると思います。
座面の高さも箱とほぼ同じです。
奥行きが三分の二くらいになって、期せずして省スペースにも役立ってくれました。
問題は耐久性ですが、これは使ってみないとわからないですね…。
安価な製品ですのでどうでしょうか。
お値段以上で丈夫であってくれることを祈ります!!
(追記ここまで)
ピアノ椅子を選ばない理由。
演奏用の椅子と言えば「ピアノ椅子」ではないかと。何故これを選ばなかったのかと。
間違いなく抱かれるであろうこの疑問に先にお答えしますと、
ピアノ椅子には座面にクッションがありますよね?あの沈み込む感触が苦手だったのと
ピアノ椅子は座ると軋んでギチギチというノイズを出します。
高さを調整する仕組みがあるが故か、メンテナンスの問題なのか分かりませんが、スタジオや演奏会場などにあるピアノ椅子はほとんどがそのようなコンディションですよね。
それが気になって仕方がなかったのでピアノ椅子はなるべく避けていました。
他のパートの例いろいろ。
ドラマーの場合。
twitterで「StudioLiteドラム教室(@StudioLiteDrum)」さんからこんなつぶやきがありました。
以下に引用させて頂きます。
StudioLiteドラム教室@StudioLiteDrum
事情によりギタリスト休業中のため、この2年はベーシストで音響・電子工学に精通している従弟と様々な音響的・機材的実験をしているのだけど、今日の実験結果は非常にショッキングだった。結論からいうと『ドラムイスによってドラムの音色が変わる』という驚愕の事実が判明!そんなバカな!ですよね?
でもこれは事実なのです。キッカケは、以前にも書いたけど、ずっと前から僕自身が自分のドラムイスとして使っていて、その後レッスン室で数年使っていた、茶色い座面のヤマハのイス。これの座面がガタガタになってしまって、普段のレッスンでは使えなくなったのですが、これを補修できないかと考えて…
台所の流しとかガス台とかで使う、金属テープを使って座面の軸受けを補修したら、酷いガタガタ状態が直って、そこそこなら使えそうになったので、試しにそのイスに替えてドラムを叩いてみた所「あれ?」と違和感があった。キックの音やスネアの音が、さっきと違って聴こえる。従弟も『音が変わった』とそれで、何度もイスを交換しながら叩いて…。最終的には録音もしてみた。結果、確かに音色は変わっている。とはいえ、誰もが聴いて分かる程ではありません。しかしながら『ドラマー本人』にとっては、結構深刻な位の違いです。キックがタイトになったり、ボヤケたり、スネアが細くなったり太くなったり
『音が悪い方のイス』で録れた音だと、正直、ビーター変えようか?ペダル変えようか?あるいは、マイキングの位置を変えてみようか?という感じ。それが『音の良い方のイス』に変えると、全部解決してしまうのです。音色だけでなく、プレイ自体も『調子の良い時と悪い時』位には違います。自覚出来ますでもこれ、よく考えてみたら当たり前なんですよ。ドラマーは『全てのプレイをドラムイスの上で行っている』わけですから、イスの違いがプレイに出ないわけがない。つまり、プレイの根本部分が、イスの違いによって決定づけられてしまうという事です。『調子の良い時と悪い時の差』になるのも全く当然!誤解の無いように書いておきますと、『イスによる音質やプレイの差』は、一般アマチュアレベルでは、ほとんど問題にはならないでしょう。また、以前に書きましたが、うちのレッスンでは、わざとガタガタのイスを体験してもらったり、僕自身は筒形のゴミ入れをイスにしてのデモ演もやります。
最近紹介した、ボロボロのセットで最高のプレイをするアフリカのドラマーみたいに、『機材にとらわれずに良い音を出す』のが僕の理想です。でも、プロレベルにおいて、大切なレコーディング現場では、音の悪いイスは使いたくないのは当然でしょう。正直、ここまで差があるとは僕も思ってませんでした!
ドラマーでもそうなんですねぇ。
ますます椅子の重要性に確信が持てました。
その他の楽器向け椅子いろいろ。
ガンバ椅子
ヴィオラ・ダ・ガンバ向けの椅子というのがあります。
一見ピアノ椅子に似ていますが、若干低めになっています。
デザインもピアノ椅子と比べると優雅な感じがありますね。
オーケストラチェアー
オーケストラの椅子と言えばパイプ椅子だと思っていたのですが、
それぞれのパート専用の椅子というものもあるそうです。
座面の高さや角度が細かく設定できるようになっています。
溝口肇さんのチェロ椅子。
チェリスト・作曲家の溝口肇さんは 早いうちから演奏時の椅子の重要性には気づかれていたそうで、 ご自身のための椅子と譜面台まで作ってしまわれました。
オーダーも受け付けてくれるそうです。
私もいつかは…(値段を見て遠い目)
Steve Vaiの椅子。
スティーブ・ヴァイは2021年初め頃に右肩と左手を同時期に痛め、手術を受けなくてはならないことになってしまいました。
その時期に新しい椅子を手に入れたそうです。
これも可動部やキャスターがなく、座る人の体にピッタリフィットするようカスタムメイドで作られます。
まとめ。
- 椅子に座って弾くと妙に力んでしまう。
- 弾いていて集中できない・不自然に疲れる。
もしこんなことに思い当たる節があるのなら、椅子が原因かもしれません。
自分に何か(技術とか姿勢とか体力とか)がまだ足りないからと自分を責める前に、椅子を見直してみると大きな発見があるかもしれませんよ。
今回のブログはここまでです。
次回もお楽しみに。
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