弦譜堂の代表・松本祐一(@YuichiMatsumoto)です。

半音下げチューニングを試したことがありますか?

スコアの最初に「Half-Step Down」と表記されていることがありますが、

そんな時はチューニングを半音下げて弾いてください、という意味です。

 

「なぜそんなことをするんだろう?」
「1フレット下で弾けばいいんじゃないの?」
と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。

今日は、

  • 半音下げチューニングのメリット・デメリット、
  • 半音下げることで何が起こるのか。

これを実際の演奏現場からの目線で考えてみたいと思います。

デメリットには対策法も挙げてみました。

 

もはや半分常識になっているハードロック界隈だけのものと思われる時もありますが、

もちろん他のジャンルでも有効ですので、是非最後まで読んでいただけましたら嬉しいです。

 

半音下げのメリット

♭系のキーへの対応が楽になる。

E♭A♭など、フラットがつくコードネームは、レギュラーチューニングですとほとんどの場合でセーハが必要になってきます。

しかし半音下げならEAといったオープンコードと同じフォームで弾くだけで出てくる音には自動的に♭が付いた形になります。

カポタストを使う手もありますが、低音側の音域が狭まるので量感が減ってしまいます。

一方でカポ付きなら高音側のきらびやかな音域へのアプローチはしやすくなるので、このあたりは「その曲に合うかどうか?」という基準で選びたいですね。

 

チョーキングが少し楽になる。

弦の張りが弱くなった分、チョーキングが楽になります。

特に1弦では恩恵を感じますね。

 

歌の伴奏の場合はヴォーカリストのキー変更への対応がしやすくなる。

歌い手の魅力をより引き出すキーへの移調の可能性が広がります。

喉の調子が良くなくて半音下げてほしい、と言われた時にも対応が楽です。

 

半音下げのデメリット

音程のコントロールが少し難しくなる。

音程を下げたことで張力が弱まった分、チョーキングがしやすくなるというメリットがありますが

音程が上ずりがちになる場合もあります。

弦の張りが弱まった分、左手で押さえている力は余分な力となって弦を指板側に押し込んでしまいやすくなります。

また右手のピッキングの強さにも影響を受けやすくなります。

すなわち半音下げはピッチのコントロールがレギュラーに比べて少しシビアになってくると言えます。

これもコントロール力を身につけるためのひとつのチャンスでもあるのですが、

ライブが近いのに半音下げにすることを迫られた方のためには1段階太いゲージに張り替える手段が最も手早いです。

対策 : 練習する または 弦のゲージを太めのものに変える。

 

高音側の音域が狭まる。

例えばレギュラーチューニングの曲でのギターソロの最後、24フレットからの1音チョーキング!!なんてあったりするとそれは半音下げの楽器では再現できないことになります。(25Fでやることになってしまいますからね・・・)

これは仕方ないですね。

まさにメリットと表裏一体のデメリットと言えます。

音域を1フレット分低い方へずらすということであり、したがって24フレットで出る音はEではなくE♭になるからです。

対策 : アレンジするか、あきらめるか、フレットの多い楽器を用意するか。

 

他のパートとコードネーム・音名での意思の疎通が取りにくくなる場合がある。

以下は演奏の場でわりとあるあるな風景です。

 

半音下げギタリスト「ここのEのとこなんだけど・・・

ピアニスト「(Eフラットだよね・・・?)

 

ピアニスト「F#mのとこから始めましょう~

半音下げギタリスト「えっ?どこ?Gmじゃないの?

 

対策 : ここは自分が意識して譲歩しよう。

 

かのイングヴェイ・マルムスティーンは普段から半音下げが基準で、「E」と言えば実際に出ている音はE♭ですが、

我が道を行く彼ですらオーケストラと共演する時にはE♭として話していました。

チューニングを変えることでいわば移調楽器になっていることに留意しておきましょう。

あなたの出している「C」の音は実際には「B」です。

 

メリットデメリットでは測れない半音下げの特性

そもそもなぜチューニングを下げる必要があるのでしょうか?

レギュラーチューニングだけで統一すれば面倒もないのではと思われる方もおられることでしょう。

そこにはメリット・デメリットだけでは分けられない理由もあるのです。

 

音色の変化による凄みと優しさ

半音下げでは弦のテンションが緩むことにより音色も変化します

特に歪ませていると音域の低さと相まって唸るような凄みとなって聴こえてきます。

こういう音は特にロックには実際マッチするんです。

ハードロック系のアーティストが積極的に採用するのもこう考えると頷けますね。

 

一方でクリーンやアコースティック系では角が取れた伸びのある優しい音になる傾向があります。

半音下げチューニングは音楽や音色によって相反した不思議な魅力を見せてくれます。

 

12種類のキーそれぞれが持つ独特な雰囲気の開拓のために。

AからG#まで12種類あるキー(調)は、それぞれが独自の雰囲気を持っています。

弾き慣れた曲でもカポタストして弾いてみると、

「あれっ、この曲2カポのほうが響きがいいな!!」

とか

「原曲のままだと弾きにくいから違うキーにしてみたけど、元の魅力が全然出なくなっちゃったな・・・」

など、覚えがありませんか?

これは気のせいではないんです。

キーと楽曲、それぞれが持つ雰囲気がマッチングするポイントがあります。他にも楽器自体の特性も関係してきます。

より曲に合うキーを開拓するために、半音下げチューニングは有効です。

 

歌伴に便利な半音下げチューニング。

個人的にはアコースティックギターのみで歌の伴奏をする時は半音下げチューニング+カポタストを基本にしています。

キー変更に対応できやすく、さらに低音が良く伸びるようになるので特にアルペジオの時などにベース音の量感をキープしやすいという利点があります。

ぜひ試してみてください。

 

今回のブログはここまでです。

次回もお楽しみに。

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Written by genpudou

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