弦譜堂の代表・松本祐一(@YuichiMatsumoto)です。
ヴィオラ・ダ・ガンバを手にしてから約1ヶ月半、初めての弦交換を行いました。
弦購入と同時に交換方法を教わるべく、
入手時に調整をお願いした「ヴィオラ・ダ・ガンバ工房L’Arbre(ラルブル)」さんにお邪魔しました。
ヴィオラ・ダ・ガンバの弦ってどんなの?
ヴィオラ・ダ・ガンバの弦は6本または7本あり、すべてガット弦(羊腸弦)です。
そのうちの高音側4本はプレーン弦、低音2本(7弦の場合は3本)は銀の巻き弦です。
ギターでの話なら、「ガット」と言っても実際はナイロン弦であることが一般的ですが、
ヴィオラ・ダ・ガンバの場合は本物の羊の腸から作られた弦です。
ガット弦のメリットは「音の良さ」。
本物のガット弦は湿度に弱く、また値段も高価ですがそれを補って余りある音色の良さが魅力です。
「この音が好きだからガンバを弾くんだ」と、私は自信を持って言えます。
人工素材の弦もあるようですが、値段と便利さにつられて張ったとしてもおそらく今ほど楽しめないでしょう。
ちなみにヴィオラダガンバは楽器全体を見渡しても金属部品は普通使われていません(巻き弦の銀は除く)。
ネジ1本すらありません。
このことがあの魅力的な鳴りを生み出す元となっているんですね。
フレットまでガット!!
金属が使われていないというならフレットはどうなんだと思いましたか?
フレットも弦と同じガットなんです。
ガットを指板に巻き付けてフレットとしています。
固さがあるのでしっかり機能するんですよ。
しかもきつく縛ってあるとはいえ完全には固定されていないので微妙に位置をずらしてイントネーションの調整をすることが可能です。
これはギターでは不可能な離れ業です。
指板の縁に少しへこみがあるのはそうした跡です。
ピタゴラス音律など、平均律以外の音律にも対応できるというわけです。
ヴィオラ・ダ・ガンバの弦を交換する。
それでは交換していきます。
実際の作業はL’Arbreの井上さんにお願いしました。冒頭の画像の方です。
最初は「同じ弦楽器なんだし、ギターで交換できるなら自分でできるんじゃないか」と思いましたが
よく見ると明らかに見慣れないことがされており、一度きちんと教わっておくべきだと思いました。
そして、それは正解でした。適当に通販で取り寄せて自己流でやらなくてよかったと思います・・・。
ブリッジ側
ブリッジに通し、結び目を1つ作って止めています。端はライターで炙ってほどけないようにします。
クラシックギターのようにブリッジに結びつけるやり方もあるそうですが、こちらの方が開放的な鳴り方になるとのことでした。
ヘッド側
ヘッド側はひたすら巻きます。
巻き数は弦にもよりますが10回近くは巻くことになります。
ペグは、ただつまみと軸を兼ねたような棒がささっているだけです。
ウクレレと同じですね。
1:1の回転比でチューニングはしにくいですが、機械機構を介さない分音は良いです。
ギアというのは振動の伝達を案外スポイルしてくるものなんですね。
ギターのように一度反対側に巻き、飛び出ている部分を挟むように巻いていきます。
ギターと違うのは反対側に巻く、その回数が3巻きくらいあるというところです。
そしてヘッドの内壁ジャストで当たるように終わるのがコツです。
こうすることで巻きつけられた弦がペグが抜けるのを防いでくれるわけですね。
とてもプリミティブな仕組み。しかし理にかなっています。
弦交換の頻度はどれくらい?
ヴィオラ・ダ・ガンバの弦交換はプレーン弦は数ヶ月に一度、巻き弦は数年に一度のペースが一般的です。
巻き弦はまだまだ使える状態であるようで、今回はプレーン弦のみの交換となりました。
弦交換の注意点。
弦交換の時に注意しなければならないのは、1本ずつ交換するという点です。
弦が乗っている駒(サドル)は接着されているわけではなく、
弦の圧力でボディに押し付けられているだけなので弦を緩めると倒れてしまいます。
元通りにセッティングするには腕が必要になりますので、自信がなければ1本ずつ外しては張り、の手順にしておきましょう。
張る弦のメーカーを変えてみる。
この機会に違うメーカーの弦を試してみることにしました。
元々張ってあった弦はToro(トロ)というブランドのものです。イタリア製です。
グレード的にどのくらいの位置なのかは不明ですが、とても楽器としての魅力のある音という印象です。
見た目は素材由来の縞々模様が残っていて精製されてない感じ。
張り替えてから気がついたのは、弦ごとの音質の差やポジションごとの鳴りの差が結構あったなということ。
無意識にそれらの凸凹をアジャストしながら弾いていました。
不便なようですが、それを補って余りある音色の心地よさがありましたね。
張り替えたのはPIRASTORO(ピラストロ)という弦です。こちらはドイツ製。
見た目にも透明感があり、洗練されたプロダクトという印象。
張ってみると、弦を移動したときに音質やピッチ感を前の弦からなめらかに引き継げる感じがとても弾いていて楽に感じさせてくれます。
音量も大きめに感じます。
一方で音色はToroを張っていた時に良いと思っていたところがなくなったかな?とも感じました。
言葉にすると生命力とか、健康美とか、そういう生きていることの素晴らしさを感じさせる要素です。
Toroでは洗練されてなさが面白味や魅力に繋がっていたんですね。
正確さや均一さといった機能を求めると野趣や奔放さという魅力が薄れていく。
相反するものとは思わないんですが、どこか両立する部分を見つけたいですね。
きっと共存もできるはずです。
弦が新しいと自分の弾き方がよくわかる。
このピラストロ弦を今後も使っていきたいか?と考えると現時点では「?」です。
たぶん次の交換では別な性格の弦を選ぶでしょう。
ですが今回、弦交換をお願いしてよかったです。
弦が新しいと弾き方が出音へよりダイレクトに反映されるようになり、今の自分の弾き方のどこが問題なのか?
どこが良いのか(これ大事!!)がよくわかるようになるからです。
L’Arbre井上さん、今回はありがとうございました。
年内はレッスンが後1回あります。
頑張って練習していきたいと思います。
使い終わった弦はどうする?
外した弦は捨てずに保存しておきます。
前述のようにフレット用として再利用したり、
万が一切れてしまった時には新品の弦では落ち着くのに時間がかかるので古い弦を張ってしのぐことができます。
自分で弦交換した動画。
その後、自力で弦交換に挑戦し、その模様を動画にしてみました。
「ヴィオラダガンバの弦交換を初めて自分でやる動画。失敗からのリカバリーもあり!!」
正しい交換の方法というより、初心者のレポートです。
ですが初めて交換される方にはご参考になる部分はあるかと思います!!
今回のブログはここまでです。
次回もお楽しみに。
[…] はなく、1:1の回転比のものであるからです。(詳しくは前回の記事をご参照ください。) […]