弦譜堂の代表・松本祐一(@YuichiMatsumoto)です。
電気楽器に関わる人にとって、「ケーブル」とは信号を伝えるためになくてはならないものです。
楽器と機材を繋ぐ時。マイクと機材を繋ぐ時。機材同士をつなぐ時。
エレキギターやシンセサイザーなど、電化された楽器を扱っていれば身近な存在です。
ケーブルについての話題は定番のひとつでもあります。
特にギタリストやベーシスト、エンジニアの間ではいつもこんな話が聞かれますね。
- 面白いケーブル見つけたよ
- あのケーブルに変えたら音が変わった
- 評判のケーブルだけど試してみても思ったほどじゃなかったね
それほど重要で身近で、普段は意識してなくても意識する時はすごくする、そんな「ケーブル」。
今回はケーブル交換を通じて物事の積み重ねについて学んだお話です。
ケーブル交換を軽視していた理由。
私は採譜環境では少しでも音源からの音質ロスを防ぐために、ある程度のグレードのケーブルを使っています。
オーディオマニアという視点ではなく、道具としての選定基準です。
一方で趣味のリスニング環境ではそれほど気にしてきませんでした。
理由は「期待するほど大きい差は出ないから」というものでした。
まぁ実際そうなんですよね…。
ケーブル交換による音質の変化ってひとつひとつは決して大きくはなく、わずかな差の積み重ねで改善していくものだと思います。
例外はプラグやケーブル自体が劣化していた場合からの交換、そしてパッシブ楽器からの出力に当たる部分の交換、でしょうか。
これはもう明確に誰が聞いても明らかな違いとなってあらわれます。
一方で信号ラインの途中部分は1か所くらい変えても大して違いは感じないのが実情です。
前々回のギター弦の話にも共通しますが、「違いは分かるけど慣れちゃうから別にいいや」くらいの気持ちでした。
ミキサーへの入力について、既成概念から脱却したことで違いが分かるようになった。
それなのにケーブルのグレードを変えようと思ったきっかけは何か?
きっかけはこの写真にあります。
仕事環境のケーブルを少しずつ入れ替えてきました。差はそう大きなものではなく、「まあこんなものか、微々たるものの積み重ねなんだな」と思ってきました。 pic.twitter.com/CRoY0y2Uzs
— 松本 祐一 (@YuichiMatsumoto) November 18, 2018
このミキサーはインプット部分に「LINE IN」と「AUX RETURN」「TAPE IN」があります。
そしてお気づきでしょうか、LINE INにはケーブルが刺さっておらず、
一方でAUX RETURNとTAPE INは満員御礼です。
「LINE IN」より「AUX RETURN」の方が音が良かった。
・LINE INは普通の使い方ならミキサーに入力するにはここにつなぎます。
ボリュームやEQなどのつまみもあってある程度の補正・調整が可能です。
・AUX RETURNは一度ミキサーに入った信号をまた外部の機器(リバーブとかですね)へ出力し、戻ってきた信号を受け入れる端子です。
こちらには補正のための機能はついていません。信号はストレートに入ってきます。
・TAPE INは昔のカセットデッキ時代の名残です。 今はCDプレイヤーが繋がっています。
今までオーディオインターフェイスからの信号はLINE INにつないでいました。
EQやボリュームでの調整を必要がある時に行えるようにと、むしろ調整の必要があることを前提に考えていたんですね。
試しにAUX RETURNにつないでみると、こちらの方がずっと音が良いんです。
EQで補正するよりもずっと、もっと根本的な生命感の部分で段違いの差があったんです。
EQやボリュームは何もしなくても通っているだけで音をロスしてしまうデメリット(調整できることとのトレードオフです)があります。
そこでAUX RETURNでは損失無いそのままの信号を再生できることになり、出てくる音はそれは生き生きとしたものだったのでした。
TAPE INもコントロールがないことによるロスのなさでは同じです。
すなわちケーブルによる違いもよく出てくるようになります。
手元にあったケーブルを何種類か入れ替えてみたところ、「試す価値がある違いである」と判断できるものでした。
しかし手持ちのケーブルではすべてをまかなえる本数がなかったため、良質なものを少しずつ買い揃えてきたのでした。
そして今月、2ヵ所のケーブルを入れ替えたことで全ての信号ラインから素性の良くわからない(何かの付属品やノーブランド品)を一掃するに至り、
出てくる音に驚くほどの違いが表れました。
しかし今日2ヵ所入れ替え、信号ラインから素性不明なケーブルが一掃されたことで激変。低音の歪みっぽさやパートごとにマスキングしあう感じが8割減です。一番グレードの低いところに引っ張られていたということですね…。
— 松本 祐一 (@YuichiMatsumoto) November 18, 2018
今までは一番グレードの低いケーブルに揃えられてしまっていたのだと思います。
だから他の部分を変えてもあまり大きな差として出てこなかったんです。
要はボトルネックになっていたんですね。
ボトルネックがすべて解決された時、積み重ねによる成果が一気に解放されたということでした。
音質改善の積み重ねも二次曲線。
努力は二次曲線となってあらわれる、という話があります。
行動を積み重ねて行けば成果もストレートに伸びて行くイメージありませんか?
やった分だけそのまま成果に反映されてほしいという思い、ありませんか。
こんなふうに。
しかし実際はこのようにある地点から爆発的に駆け上がることが多いように思います。
物事で結果を出している人を見ると確かにそんな感じあります。
たぶん私の環境も、最後までボトルネックとなっていたケーブルが取り払われたことで一気に解放されたのでしょう。
変な例えかもしれないけど、努力が花開くのもこういうことに似てる部分あるかもしれないと思いました。
— 松本 祐一 (@YuichiMatsumoto) November 18, 2018
結果を出すためには継続が大事と言われますが、そうなるように続けるためには
- 積み重ね続けること
- 差や成果が分かりやすい環境を作ること
この2つが大切なんだなと、ミキサーのケーブル交換から学んだのでした。
今回のブログはここまでです。
次回もお楽しみに。
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